AIの議事録を試したものの、思ったほどではなかった。そういう声をよく聞きます。要点がずれている、発言者が入れ替わっている、決まっていないことが決定事項として書かれている。これでは結局、自分で書き直した方が早くなります。
ただ、原因の多くはAIの性能ではありません。渡している音声の側にあります。ここを整えるだけで、同じツールのまま精度が変わります。
精度が出ない原因は、たいてい音声にある
文字起こしの精度は、録音の条件でほぼ決まります。よくあるのは次の三つです。
ひとつはマイクが遠いこと。テーブルの真ん中にスマートフォンを一台置いた録音では、奥に座っている人の声が拾えません。拾えていない音は、どんなAIでも復元できません。
ふたつめは声が重なっていること。相槌や割り込みが多い会議ほど、発言者の切り分けが崩れます。日本語は語尾で意味が変わるので、語尾が潰れると内容ごと変わります。
みっつめは反響です。硬い壁と大きなテーブルの会議室は、想像以上に音が回ります。オンライン会議の方が精度が高く出るのは、一人ひとりが別のマイクで、反響のない状態で録れているからです。

録り方を変える四つの手
1. マイクを一つにしない
対面の会議でも、各自が自分の端末で録るか、会議用マイクを人数分に近づけます。難しければ、発言者の近くに一台足すだけでも変わります。録音は後から良くできません。ここだけは物理の話です。
2. 発言の頭に名前を置く
「では山田から報告します」と一言入れる。これだけで発言者の紐付けが安定します。慣れるまでは不自然に感じますが、二回目には誰も気にしなくなります。
3. 固有名詞を先に渡す
社名、製品名、社内の略語。これらは事前にリストで渡しておきます。AIは知らない固有名詞を、音の似た一般名詞に置き換えます。後から直すより、先に渡す方が圧倒的に速いです。
4. 決定事項はその場で言い切る
「じゃあそれで」で終わらせず、「では、来週金曜までに田中さんが見積を出す、で決定します」と言い切ってから終わる。人間が聞いても曖昧な会議は、AIにも書けません。議事録の質は、会議の進め方の質を超えません。
AIに任せる範囲を決める
議事録と一口に言っても、中身は四つに分かれます。
- 全文の書き起こし。ほぼ任せられる。検索できる形で残す価値がある
- 要約。任せられるが、長さと粒度を指定しないと使いにくいものが出る
- 決定事項の抽出。会議で言い切れていれば取れる。曖昧なら取れない
- 宿題と期限。誰がいつまでにを明示していれば取れる
逆に、任せない方がよいものもあります。発言の意図の解釈と、書かないでおく判断です。会議には、記録に残さない方がよい発言が必ず含まれます。ここは人が決めます。
そのまま配ってはいけない
出来上がったものを、確認せずに全員へ送るのは避けます。見るのは五分で足ります。見る場所も決まっています。
数字、固有名詞、否定形の三つです。金額と日付の桁、社名と人名、そして「やらない」「見送る」が「やる」に化けていないか。文字起こしの誤りは、この三か所に集中します。
五分の確認を挟むだけで、事故はほぼ防げます。そして確認する人を先に決めておかないと、全員が確認するか誰も確認しないかのどちらかになります。
続けるために決めておくこと
一度うまくいっても、置き場所が決まっていないと続きません。保存先、ファイル名の付け方、誰が見られるか。この三つを最初に決めます。
とくにファイル名は後から効いてきます。日付と会議名と相手先を機械的に並べる形にしておくと、半年後に探せます。議事録の価値は、書いた瞬間ではなく探せたときに出ます。
まとめ
AIの議事録がうまくいかないとき、疑うべきはツールより先に音声です。マイクを分ける、名前を先に言う、固有名詞を渡す、決定事項を言い切る。この四つで結果が変わります。
そのうえで、任せる範囲を決めて、出す前に五分だけ人が見る。ここまで含めて仕組みにすると、議事録は書く作業から確認する作業に変わります。
どの業務から自動化を始めるかについては、AI業務自動化は何から始めるか|最初に手をつける3業務の選び方で整理しています。あわせてご覧ください。
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